イギリスのダンス・ムーブメント・サイコセラピー

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歴史

 1920年代から精神分析学者のフロイドやユング、1950年代には、アンナ・フロイド、ビオン、小児科医のウィニコットなどが登場し、彼らがイギリスで活躍することで、イギリスでは精神分析および心理療法の基礎が築かれていった。アメリカではすでに1940年代よりマリアン・チェイスによりダンスセラピーの実践がおこなわれていたが、イギリスでは1960年代頃よりダンスセラピーが広まったとされている。パイオニア世代として、ボニー・ミーカムやヘレン・ペインが上げられる。

 現在は、英国ダンス・ムーブメント・サイコセラピー協会(The Association for Dance Movement Psychotherapy UK (ADMP UK) : http://admp.org.uk/)が中心となり国内のダンスセラピスト(DMPと略する)をまとめている。当協会が認定するセラピストは300名以上いる(2016年時点で、日本人は7人)。イギリスでは、ADMP UKが認定する大学院でダンスセラピーの修士号取得を義務化しており、英国内では現在4つの大学院で学べる。

 

資格取得

 イギリスの大学院修士課程のプログラムでは、フルタイムで2年、パートタイムでは3年(もしくは4年)学ぶ必要がある。プログラムでは、主に「(人と或いは自分で)動く」こと、「自分はどう感じたか」、「他の人は何を感じたかを聴く」、「自己と他者の関係性を分析する」ことが強調されるため、2年間の学びで深層心理に入り込んだ学びを行うことができる。言葉よりも、動きを体感すること、それを言葉にする、そしてまた動くという作業を繰り返していく。

 大学院ではグループダイナミックスを学ぶため、少人数で始まり、大人数で踊る(4人~60人)経験(Experiential Groupと称する)をする。その時に感じたことがグループでシェアされたり、ノートに記録したりすること(ジャーナルと呼んでいる)が大切だ。

 臨床経験は大学によって異なるが、協会が課しているのは、トレーニングを通して675時間(或いは90日間)の時間を費やすことが求められている。臨床経験と連動し、訓練のコアとも言えるのがスーパービジョンだ。スーパーバイザーやグループの仲間とどのような関係性を作るか、臨床経験についてグループディスカッションをしたり、時には動いたりする。大学院の訓練期間において、子どもから大人まで対象としてセラピーを実習する機会を持つ。

 アカデミックなワークとしては、動きの意味や観察の勉強を行う。そこで扱うのは、ラバンとケステンベルグの動きの理論である。また1年目と2年目の終わりには論文を書くが、クリニカルワークをいかに客観的な洞察を含めて書くかが求められる。また年間を通して経験したことを動いてビデオにまとめたり、DMPをキーワードにしたリサーチが課せられる大学もある。学派としては、サイコダイナミック(Psychodynamic)、ヒューマニスティック(Humanistic)、サイコアナリシスなど大学によって流派が多少異なる。

 日本の資格制度と決定的な違いは、パーソナルセラピーが義務化されており、2年間で80セッション受けなければならない。これはセラピストの逆転移を体感し理解を深めたり、クライエントの立場に自分の身を置くことを学んだり、他の心理療法のメソッドに触れる機会を訓練生が持つことになる。また、自分自身がどんなスタイルのダンスでもよいので外に行って継続的に動くことが推奨されている。

 

卒業後

 卒業すると、Registered Dance Movement Psychotherapist (RDMP)という称号が与えられ活動することができる。しかし、ADMP UKの規定では、3年間はプライベートプラクティスは許されず、どこかの団体で仕事することが条件だ。また、CPD(Continuous Professional Development)という義務が年間24時間課せられており、積極的にワークショップやセミナー、リサーチや論文発表が推奨されている。

 更に、2015年には協会悲願であった英国カンセリング・心理療法協会(UKCP)のメンバーにADMP UKが認められたため、一定の条件を満たす(卒業して5年間のキャリアが平均して必要とされる)とUKCPのメンバー申請をする資格が与えられる。これにより、仕事場が増えるという利点がある。

 

ダンスセラピストの活躍

 イギリスでは、4人に1人が何かしらのメンタルヘルスの問題を抱えていると言われている。日本と違うのは、そういったメンタルヘルスを積極的に取り組むチャリティ団体(日本でいうNPO団体)が数あること、またそれが盛んに議論されるワークショップやセミナーが行われている。NHSという国営の病院が各地に点在し、そこの精神病棟にはアートセラピーの部署を持つ所もある。そこでは音楽、芸術、ドラマ、ダンスのセラピスト達がOTと連携し、各病棟や関連のコミュニティセンターで活動している。また、養護学校やチャリティ団体などでもDMPが活動する。しかし、実際には、卒業してすぐに仕事は見つからないのが現状であるため、多くのRDMPはボランティアとしてセラピーの仕事に取り組むことから始める。こうした現状からも、就職活動に関しては協会や大学が真剣に取り上げるべき今後の課題とされている。

 

 

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